若者層の利用が多いTikTokなどのショート動画SNSでお菓子作りから健康グッズ、ペット用品など大麻関連のトピックが急増しています。今回は米国の例を取り上げマーケティング動画に関するガイドラインやヒット戦略についてご紹介します。
成長を続ける動画広告
私たちの生活の多くの部分を占めるソーシャル メディア。すべての世代においてインターネット利用時間が増加しており、中でも10 ~20 代の若者は毎日平均 8 時間をオンラインで過ごし、情報検索も検索エンジンよりもSNSを好む人が圧倒的に多いといわれます。また多くの消費者が動画を好むようになっているのも特長です。没入感があり視覚的にも楽しく、情報量が多いのがその理由です。
このような状況を背景に、ショートムービープラットフォームのTikTok と 写真とショート動画をメインコンテンツとするSNSインスタグラムを活用し、より訴求力のあるヘンプ(大麻)関連製品の投稿や広告が盛んになっています。今この瞬間に流行っていること、作り込みすぎない日常のワンシーンを取り上げたコンテンツがリアルさを求める若い世代の好みとマッチしているようです。
この層では大麻にネガティブイメージを抱く人が比較的少なく、TikTok 上の大麻関連の動画を分析した研究でも、ほとんどが大麻をポジティブに扱っていることも分かっています。
「ハッシュタグ」で分かった傾向
研究者は100万回ビューを超えた動画のハッシュタグ (例えば#weed など) を検索し、TikTok上のビデオをサンプリングし、最も人気のある大麻関連の 9 つのハッシュタグから 881 本の動画サンプルを選び出しました。
そしてこれらの動画に含まれる重要なテーマを特定しました。
ユーモア/エンターテイメント (71.7%)
経験 (42.9%)、
ライフスタイルの受容性 (24.6%)、
情報/ハウツー (7.5%)
創造性 (5.4%)
警告 ( 2.7%)。
ユーモアとエンターテイメントをテーマにした動画は、TikTokユーザーに大麻グッズ使用をポジティブに描写するため、コメディー的ストーリーを採用する傾向が高くなっています。
またユーザーの個人的な大麻経験を扱った動画では、ストーリーを語ったり、そのシーンを再現して見せたり、実際に使用中に撮影するといった手法があります。
ライフスタイルの受容性のカテゴリーでは、大麻使用を支持するコミュニティに関連付けられたハッシュタグ 「#stonersoftiktok、#stonertok、#cannamom」 など がよく使われていました。
#stonertok は「ストーナー(大麻使用者)+TikTok」の略で、」#stonersoftiktokはストーナー(大麻使用者)+ソフト+TikTok」のことです。そして3つ目の日本ではあまり見慣れない#cannamom(カンナマム)というハッシュタグは「カンナビス +マム(母親)」のことで、大麻を使ってストレスや体の痛みを癒したりリラックスし子育てをより楽しいものにしたり、てんかんなど重病を抱える子どのものために大麻医療を支援する女性たちのことを指します。
視聴率の高い動画の多くの中は、このように大麻をポジティブに描写したものが主流です。大麻の使用に関する中立的な立場をとった動画はあまり見られず、ネガティブに扱った動画は最も少ないという結果になりました。
また、喫煙やベイピング、エディブル(食用大麻)を食べるなど、実際の大麻使用を描写した動画はサンプル全体のうち 50 本と少数にとどまりました。
若年層への配慮が不足しているのが現状
大量の動画が出回っているのにもかかわらず、大麻や大麻以外の薬物使用を描いたソーシャル メディア コンテンツへの露出がユーザーに及ぼす影響や潜在的リスクについてはほとんど知られていないのが現状です。
リサーチでは
TikTok上 にはリンクを介して TikTokアカウントを持っていなくても一般にアクセスできる大麻関連の動画が多数ある。
年齢制限やコンテンツ警告バナーがない
など、 大麻使用に関する健康リスクや未成年への影響に配慮した動画が少ないことも指摘しています。
TikTokでは、大麻使用を明示的に示すハッシュタグ(#カンナビスなど)へのアクセスを削除することで、コンテンツ利用に関する追加措置を講じました。ただしこれらの内容が検索で見つけにくくなっただけで、動画自体には引き続きアクセスすることができます。
ヘンプ関連商品のSNSマーケティング戦略
「ポット・ブラザース・アット・ロー」というニックネームの大麻ビジネスと刑事弁護の弁護士のコンビ、クレイグとマークは、 2018年のクルスマスに投稿された動画により、一夜にしてFacebook 上で数百万の視聴数を獲得し時の人となりました。彼らの投稿は大麻に関するユーモア感のある教育コンテンツが主流です。(https://www.potbrothersatlaw.com/)
ヒットの背景には音楽、大麻、メディア企業Respect My Region (RMR) の戦略がありました。
彼らのビジネスに合わせた動画マーケティング戦略では、午前中にインスタグラムで「口コミで広まりやすい」動画を撮影し、1 日の特定の時間にそのうちの 2 ~ 5 件を Facebook に投稿するという 2 ヵ月戦略を組みヒットを生み出したといいます。
RMRのジョーイ・ブレードとミッチ・ファイファーは、若い世代に人気のTikTokとインスタグラムを使って大麻関連のトピックを投稿したり広告マーケティングするためのステップや注意点について以下のように紹介しています。
- 現在バイラルとなっている ハッシュタグとトレンドを特定し、これらのトレンドをブランドや製品にどのように関連付けるかを考える。
- 特定のトレンドに合わせて作られた投稿や動画を調査し、自分のブランド、または製品に関連すると思われる動画で行われている、または使用されているアクション、音、歌などを分析します。
- 他の成功した大麻ブランドが TikTok で何をしているかを調べ、彼らのインスタグラム投稿をリサーチし、同様のコンテンツを作りクオリティを上げる(コピーではなく参考にしてオリジナルコンテンツを作る)。
- 撮影と編集が簡単にできるコンテンツ作成を開始する (1 日 1 回)。
- 規制対象になり削除されないよう、動画にはウィード・フラワーやベイプ、水パイプ、ロールされたジョイントといったアイテムを極力表示しないようにする。代わりに、面白い小道具を使ってアクションを模倣する。
- 各投稿では 3 ~ 5 個の ハッシュタグ を使い、それらがトレンドとブランドにちゃんと関連しているかどうか確認する。
- オリジナルコンテンツを 1 日に 1 ~ 4 回公開し、数万の動画サンプルがないトレンドを選択する。
また動画は使用メディアによりますが、以下のような動画仕様がサポートされています。
ファイルの種類: .MP4、.FLV、.WEBM、.MOV、.MPG、 .MPEG。
ファイルサイズ: 200MB以下。
フォーマット: 16:9 または 4:3。
ビットレート: 2500 kbps 以上を推奨。
長さ: 5 秒から 5 分の間。
また広告の場合は、
健康または医療上の利点を示唆しない
子供が喜ぶ要素(漫画のキャラクターなど)を使わない
虚偽または誤解を招くような表現をしない
「成人向け」と明記する
といった配慮も重要です。
また他にない独自の売りや強み、付加価値といったユニーク・セリング・ポイント(USP)を把握し打ち出していくことも大切です。
まとめ
すでにレッドオーシャンと言われる大麻ビジネス業界で際立つには、できるだけ多くのマーケティング戦術や戦略を利用することを考えなければなりません。一般的には多くのことを試すほど、この競争の激しい市場で成功する可能性が高くなります。挑戦してうまくいかなかった点を修正してあきらめずにトライし続けることが、どんな分野にも必要な姿勢と言えるのではないでしょうか。
<参考資料>
https://www.bigcommerce.co.uk/articles/selling-cbd-online/cbd-marketing/