現在欧米ではビーガン食が大ブーム。環境にも体にも優しいのがその理由ですが、デザートやおやつに人気のアイスクリームにもビーガン版が誕生しています。数えきれないほどの商品がありますが、本稿ではヘンプをベースにしたアイスクリームを紹介します。
罪悪感フリーの植物性アイス
欧米諸国、中でも肥満度が高いと言われる米国や英国では罪悪感を持つことなく食べることができる低カロリー&高プロテインのデザートに人気が集まっています。美味しいけれどカロリーの気になるアイスクリームはこのブームの影響で様々な新商品が誕生しているジャンルの一つです。
また環境問題に敏感な若い世代の間では、食べ物も環境ガス排出量が少ないものを選ぶことがポピュラーになってきています。昔ながらのアイスクリームは乳製品ベースのため生産時に排出される環境ガスの量が高くなりますが、植物性のビーガンミルクを使ったアイスクリームはカロリーが低めで環境ガス排出量も少なくなるのでダブルで「罪悪感フリー」。環境派にもダイエッターにも嬉しいオプションになっています。西欧諸国では2014年から2018年の間に、ビーガンブームの影響によって植物性アイスクリームが4倍にも増えたというから驚きです。(Innova、2019年調べ)
ビーガン人気の理由
植物性アイスといえばかつては健康ダメージを引き起こし森林破壊の原因にもなっているパームオイルが使われているものが主流でした。しかし現在では豆乳、アーモンドミルク、ココナツミルク、オーツ麦ミルク、ヘンプミルクなどをベースにしたものが増えています。
その理由は環境に優しいこと。コップ1杯の牛乳を作り出すためには牛を飼育するための土地や、土地の大量の水、飼料が使用され、それにともなう環境ガス排出量も高くなります。これを植物性ミルクに切り替えることで土地や水、エネルギー利用を圧倒的に抑えることができるようになるのです。また植物性ミルクは牛乳アレルギーがある人も安心して飲むことができ、牛乳の生産量を増やすため乳牛に投与される遺伝子組み換えウシ成長ホルモンを摂取しなくて済むのも大きなメリットとなっています。
植物性ミルクは海外で超メジャーな存在
日本の市場で植物性ミルクは豆乳以外の製品はまだ珍しい存在ですが、欧米では一般的なスーパーマーケットでもかなりの種類の選択肢から選ぶことができます。その種類は豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ライスミルク、オートミルク、ココナッツミルク、ヘンプミルク(麻)、フラックスミルク(亜麻)、ピーミルク(エンドウ豆)、ポテトミルク(じゃがいも)など実に様々で、オーガニック製品も数多く揃っています。最近では海藻から植物性ミルクを作る技術も開発されました。食を楽しみながら気候変動問題に取り組むには、企業と消費者がゴミ問題やフードロスをなくしていくほかにも、このような植物性食品への切り替えが重要になるといわれています。
ヘンプミルクのメリット
植物性のミルクの中でヘンプミルクが優れている点は、環境負荷の低さです。植物性ミルクは牛乳と比較すると、もともと環境負担はかなり低いのですが、ヘンプは肥料や農薬、水の使用量が少なくても丈夫に育ち収穫までのスピードが早く大気中の二酸化炭素をどんどん吸収します。また皮膚、脳、心臓、神経系、免疫系の健康を促進するオメガ-3とオメガ-6脂肪酸をバランスよく含んでいる点でも優秀です。豆乳やナッツ系ミルクと異なり、アレルギーを起こす人が少ないのもメリットです。
トラ保護のために生まれた「ワイルドでデリシャス」なRØAR
環境保護と味にこだわった、ヘンプミルクのアイスクリームの例をご紹介しましょう。
虎のマークが目印の「RØAR(ロア)」は英国で生まれた植物性アイスクリームの人気ブランド。ハーゲンダッツなど、世界的なアイスクリームを抱える英国フロネリのブランドです。ヘンプシードとヘンプ由来のプロテインパウダー、ココナツやひまわりオイルを使った「ヘンプシードチョコレートブラウニー」アイスは中でも人気商品。トラのマークがついているのは売り上げの一部を絶滅の危機にある野生のトラ保護に使っているため。商品名の「ロア」も、英語の虎の鳴き声(Roar=「ガオー」猛獣の鳴き声)をそのまま使ったネーミング。植物ベースとは思えない、濃厚でリッチな食感のアイスクリームです。
同ブランドではパンテーラのタイガーフォーエバーファンドと提携し、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイの7つのトラ生息国での取り組みを支援しています。
Z世代に受けるWonderlab
ヘンプシードとオーツ麦をブレンドした米国生まれのプラントベース ・アイス「Wonderlab(ワンダーラブ)」も環境ガス削減や再生食品システムをサポートするブランドです。中でもビーガンジェラートのDoozy Pots(ドゥージー・ポッツ)は、現在、全米の400を超える店舗で販売されています。このアイスの生みの親は人気アイスブランド「ベン&ジェリーズ」で働いていた経験もある食品科学者。ベン&ジェリーズでビーガンアイスの開発に関わったことをきっかけに自分のブランドを立ち上げました。
Doozy Potsはヘンプとオーツ麦をうまくブレンドすることで、従来の乳製品やココナッツミルクの飽和脂肪を一切含まない、昔ながらのジェラートを思わせる食感を実現しています。ミントチョコレートチップ、コーヒー、チョコレート&ラズベリー、バナナ&シナモンなどフレーバー豊富なのも嬉しいポイントです。
ワークアウト派にも嬉しいIsoCream
ニュージーランドを拠点とする機能性食品会社IsoCream(アイソクリーム)は、ヘンププロテインを使用した、98%シュガーフリーのアイスクリーム。糖質を控え脂質とプロテインを多めに摂るケトジェニックダイエット中の人や、プロテインをしっかり摂りたいワークアウト好きに受けているブランドです。
まとめ
美味しくて環境に優しく、ヘルシーなアイスクリームとあればぜひ試してみたくなりますね。これらのブランドではヘンプ生産はもちろんのこと、砂糖キビの生産環境を改善するプロジェクトにも取り組むなど、原料生産と環境との関係にも配慮したエシカル企業が多いよう。サステナブルを意識したライフスタイルの一歩に、こんな楽しい商品を取り入れてみてはいかがでしょうか。