ハリウッドの大御所俳優で映画監督のクリント・イーストウッドが、CBDメーカーを相手にした裁判で勝訴したニュースが報じられました。本稿ではセレブとCBDブランドの関係についてご紹介します。
事件のいきさつ
スポーツ選手やハリウッド俳優などのセレブたちが自分の知名度を生かし、ブランドのイメージモデルをつとめて、商品をプロデュースすることがあります。コスメやファッションブランド、健康食品などのほかに、最近では人気上昇中の大麻由来ウェルネス成分CBDのブランドを立ち上げて、ブランド・アンバサダーになるセレブも少なくありません。
しかし今回のクリント・イーストウッド氏の事件は少し事情が違います。本人の承諾なく彼の名前や写真がCBDサプリ広告で使用されていたことが原因で、訴訟事件に発展したのです。
イーストウッド氏と彼の肖像権を所有するクリント・アンド・ガラパータ社は、2020年から続いていた裁判によって、リトアニアのCBDブランドに対し彼の名前や画像使用に対する永久的な差し止め命令を与えたほか、損害賠償610万ドル(約6億8000万円)を勝ち取りました。
リトアニアの会社が2021年3月にカリフォルニア州の裁判所への出頭命令に応じなかったことから欠席裁判となり、前述の判決が下される事になったと報じられています。
たび重なる不正利用
イーストウッド氏の写真や名前がCBDサプリ広告に無断で使われたのは実は今回が初めてではありません。米国においても3つのCBD企業(Sera Labs Inc.、Greendios、For Our Vets LLC)が、本人の了承を得ないまま彼の名前を広告に使っていました。
彼らは「イーストウッドは映画製作を辞めてCBDビジネスを始めた」「イーストウッド氏は我が社の製品を承認しており、CBDビジネスに集中するために映画製作を辞めた」といったフェイクニュースを流布させ、「イーストウッドはこのCBDでよみがえった」といった刺激的なキャッチフレーズを使って商品を販売したほか「クリント・イーストウッドが今日、衝撃的な秘密を暴露する」という件名のスパムメールを送信していたといいます。
イーストウッド氏は肖像権の不正使用や名誉毀損はもちろんのこと、ユーザーが彼自身で商品をプロデュースして特定のブランドを応援していると誤解させるような内容はやめてほしいと、これらのメーカーを訴えていたのです。
CBD自体は規制物質ではない
CBD(カンナビジオール)は大麻草に含まれるカンナビノイドという薬理成分の一種ですが、精神を高揚させる、いわゆる「ハイ」の状態を引き起こすカンナビノイドTHCとは別の成分であり、違法性や中毒性はありません。海外でも健康目的に広く使用されている成分で、日本でも合法とされています。
大麻と聞くとまだマイナスイメージを抱く人も少なくはないのですいが、大麻草は繊維作物として利用されていただけでなく薬としても使われてきた長い歴史があります。科学の進歩によって、CBDなど特定の大麻由来成分が体内の炎症を抑えて、不安や不眠状態を緩和してくれることが分かってきており、化学薬品に変わる新しい成分として現在世界的なブームになっています。
イーストウッド氏の訴訟は肖像権の侵害が問題になっただけで、CBD自体に違法性があったわけではないのですが、悪質な企業によってマイナスイメージが広まってしまったのは残念なことです。
クリック欲しさで知名度を不正利用する企業
『ダーティハリー』シリーズでスーパースターの地位を獲得し、映画監督としてもアカデミー賞を受賞したイーストウッド氏。90歳を超えてもこのような事件が起こるのは彼の才能が素晴らしい証でもあるのですが、有名人の知名度を不正に利用する悪質な企業は後を断ちません。
映画俳優のトム・ハンクス、トップテレビ司会者オプラ・ウィンフリー、ジョージ・W・ブッシュ前大統領なども、タイアップ広告契約を交わしていないのにもかかわらず「〇〇氏も絶賛」など写真や名前を無断で使用された著名人たちの1人です。
このような記事はネット上でとくに広告効果が高く、著名人の名前を使うだけでクリック率が大きく上がるため不正広告は後を絶たないよう。ネット上に広く散らばっており名誉毀損で訴えようにも数が多すぎるためキリがないという難点があります。
イーストウッド氏も、自身の肖像権を不正に使用している会社があまりに増えてしまったためやむを得ず訴訟に踏み切ったと報じられています。
「本人がプロデュース」のCBDブランドもたくさん
もちろん有名人を使った広告がすべて怪しい訳ではありません。トレンドのサプリということもありスポーツ選選手やタレントなど、サイドビジネスとしてCBDブランドを経営している有名人は増えています。
例えばボクサーのマイク・タイソン氏はDWiiNK©という CBD飲料ブランドを持っていますし、人気の格闘家ニックとネイト・ディアス兄弟のブランドGame Up Nutritionは、米国コロラド州・オレゴン州産の大麻を使用した商品が高い評価を受けています。ディズニーの大ヒット作『アナと雪の女王』でアナの声優を務めたことで知られる女優のクリスティン・ベルも、CBDコスメブランドHappy Danceを立ち上げています。
情報を見抜く力を身につけよう
有名人のCBDブランドは、彼らの知名度が手伝い高品質で信頼性が高いと考えられがちですが、実際には通常のCBDブランドと変わるところはありません。ユーザーにとって大切なのは誰のブランドかということよりも、安全性や成分表示などの透明性。
情報に溢れた社会の中で、有名人の広告に安易に惑わされず、品質や倫理性などをきちんと調べていくユーザーの姿勢も大切になります。また、自分の目的にあった用品であるかどうかを購入前にしっかり見極めることも満足な体験をするために必要なプロセスです。
日常生活やネット上の情報を上手に取捨選択し活用していくための情報リテラシーはしっかり身につけていたいもの。企業もユーザーも向き合い続けていくべき課題といえるでしょう。
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