現在の大麻ブームは様々な業界にとって大きなビジネスチャンス。消費者にとっても優秀なプロダクトに出会える嬉しい時代です。本稿ではヨーロッパの大麻ビジネスが集まるイベントについてご紹介します。
医療&ウェルネス大麻に期待のヨーロッパ
世界レベルで伸びている大麻ビジネス市場。タイなどでも長らく禁止されてきた大麻成分を添加した食品や医薬品の製品開発や販売が可能となり、様々なメーカーが参入しています。
最近の市場レポートによると、2019年の世界の産業用大麻市場は約50億米ドルで、2026年までに約360億米ドルに達すると予想されています。
特に大麻医療分野での勢いが顕著でパーキンソン病、アルツハイマー病、関節炎、癌、うつ病、不安神経症、てんかんなど、さまざまな病気の治療に使用されるようになってきています。欧州では医療大麻が合法化される国が増え、嗜好用に関してはオランダやイタリアなどのように合法化ではないものの「非犯罪化」され、容認されている国もかなりあります。またイギリスのように嗜好用大麻が違法になっていても、公然と売買したり、騒ぎや犯罪を起こしたりすることがない限り容認している国もあります。
非犯罪化・容認状態になっているのは、一定のガイドラインのもとで大麻を流通させるのはより体へのダメージが大きいハードドラッグに手を出すよりは、ましという「ハームリダクション」の考え方に基づいているため。また、あまり問題を起こさない個人ユーザーに警察の時間と資金を費やすよりも、闇の流通ルートをにぎる犯罪組織の摘発に注力したいという事情もあります。
ヴィーガンブームとも好相性
こういった背景から、欧州の麻ビジネスは喫煙用ではなく、品種改良や医療用やウェルネス向け大麻製品が中心です。中でも日本でも合法的に流通している大麻成分の一つCBD(カンナビジオール)を配合した製品に一般消費者の関心が集まっています。
欧州では地球環境保護の観点から動物性の食品や製品を使わないヴィーガン(もしくはプラントベースと呼ばれる)が現在大きなブームとなっており、大麻製品は植物性でナチュラルな製品を求める層にもアピール。CBDサプリやコスメ、筋肉の炎症を抑えるアスリート向けのアフターケア製品、シニア用、ソフトドリンクなど広い層のニーズに応えた商品が中心になっています。
また使い捨てプラスチックストローやマドラー類の使用が禁止されるなど脱プラスチックの動きが大きいため、麻や竹を使ったバイオプラスチックのマイカップやストロー、水筒なども人気です。
オランダの老舗大麻フェス「カンナビス・カップ」
欧州各地で開催されている大麻ビジネス展示会へ出かけると、様々な商品に出会うことができます。
古くから知られているのは1987年に米国の大麻雑誌「ハイタイムズ」の編集者が始めた大麻コンテスト「カンナビス・カップ」です。これはオランダのアムステルダムで毎年11月に開催され、大麻品評会や教育セミナー、様々なグッズの展示販売が行われる大麻の祭典。ライブミュージックもありフェスティバルムードも満点です。チョコレートやグミ、コーヒーなどの食品やドリンク類、ヘンプファッション、そして嗜好品として楽しむ大麻など様々なジャンルのメーカーが参加しています。
合法ではないものの大麻に比較的寛容なオランダでは、社会的に肩身が狭くなりつつあるタバコに代わって、お酒やコーヒーのようにライフスタイルの1つになっているムードが伝わってきます。州ごとに大麻合法化が進むアメリカでも「ハイタイムズ」主催の同名フェスティバルが毎年開催されています。
ナチュラル系のイギリス
イギリスでもヘンプ(大麻)見本市や、カンナビス関連イベントが盛んです。特にCBD製品はここ数年で一気に人気が高まり、街中のドラッグストアや大手スーパーなどでもCBD製品が手軽に買えるようになっています。
ロンドンのランベス区では2000年代に地元の大公園で音楽と大麻喫煙を楽しむ「カンナビス・フェスティバル」が開催されていた時期もあり、2018年には「ロンドン・カンナビス・フィルム・フェスティバル」も開催。地方都市でも様々なイベントが行われています。
世界級の音楽フェスティバルの聖地として知られるグラストンベリーでは、ヘンプの可能性に触れ、ワークショップ、トーク、音楽、料理、などの体験ができる「ヘンプフェスト」(2018年)や、映画公開やパネルディスカッション、ヘンプ経験を共有する「グラストンベリー植物医学会議」( 2019年)が行われました。オランダのイベントと比較すると、教育色がありナチュラルさを前面に押し出している印象があります。プラントベースに加えて、アロマセラピーやハーブが好きな国民性も関係しているのかもしれません。
また日本でいうとNHKに相当する国営放送BBCの人気シリーズ「ホライズン」でも医療大麻や大麻が脳と体に及ぼす影響を題材にした特別番組「Cannabis: Miracle Medicine or Dangerous Drug?(大麻:奇跡の薬か危険な麻薬か?)」などの様々なドキュメンタリー番組を放映しており、人々の意識も変わりつつあるようです。
ノベルフード認可でより安全に
急増する大麻ビジネスの展示会。人気のウェルネス系大麻イベントや、女性ヘンプ起業家向けのイベントが行われるあたりに市場の拡大を感じさせます。ペットに化学薬品を与えたくないペットオーナー向けの商品も人気です。CBD製品に炎症緩和やリラックス効果、安眠などが期待できることが知られるようになり、パンデミック下でこれまでの枠を超えユーザー層が広まっています。
ここで気になるのが商品の安全性です。欧州では「新しい食品」はノベルフード制定法令に従い安全性の承認を得なければならないルールがあります。これはチアシードやバオバブの果実など健康食品やサプリメントの安全性を保証するために作られた法令です。ナノテクノロジーやクローン技術など新しいプロセスによって生まれた食品にも適用される可能性があります。
イングランドとアイルランドではCBD製品がすでにノベルフードの対象になっており、新規食品として流通するためには「人体に悪影響がないこと」「栄養面でのデメリットがないこと」「消費者が新規食品だとはっきりわかるようにすること」などが必須条件となっています。
ビタミンサプリなどと同様に、健康目的で使用されることの増えたCBDや大麻製品。今後さらに多くの国でノベルフーズの対象になり品質が管理されることで、消費者もより安心して使うことができるようになるでしょう。
<参考資料>
カンナビス・カップ
https://www.cannabiscup.com/
ヘンプフェスト
http://hempfest.uk/
ノベルフード
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/90cbe8dc7fd1f1cb/eu_novelfood.pdf
ノベルフードと大麻製品
https://www.food.gov.uk/business-guidance/cbd-products-linked-to-novel-food-applications