米国を中心に医療大麻が大流行し、CBD製品が飛ぶ鳥を落とす勢いで市場を拡大しています。ショッピングモールや空港などではCBD入りのチョコやグミが販売され、健康食品としてのサプリメントも大人気。近年は日本国内においてもCBDを採用する医療機関が続々と増えており、医療現場からの注目も高まっています。
そもそもCBDにはどんな成分が含まれているのか。どんなメリットをもたらす存在なのか。本項ではその正体に迫ります。
大麻に含まれるカンナビノイド
CBDにはさまざまな薬効があることが知られており、今も積極的に研究されています。そもそもCBDとは何なのかというと、これはカンナビジオールという大麻(カンナビス)特有の成分です。そして大麻にはCBD以外にもたくさんの特有成分が含まれており、これらをカンナビノイドと総称します。
アサ科1年草薬用植物アサ(Cannabis sativa L.)の場合、カンナビノイド類やテルペン類、フェノール類、フラボノイド類など実に500種類以上にもおよび化合物が含有されていることがわかっています。
その中で大麻の有効成分であるカンナビノイド(生理活性物質)は104種類あることが確認されています。大麻のカンナビノイドでもっとも有名なのはTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)でしょう。これはいわゆる「大麻でハイになる」状態にする主成分で、精神作用があります。
一方CBDにはTHCのような精神作用がないのが特徴です。CBDの場合、精神作用はありませんがさまざまな疾患の症状緩和や心身のバランス矯正、リラックス効果などに期待できるのがメリットです。
カンナビノイドの種類
大麻に含まれるカンナビノイドは、さまざまな研究により種類が明らかになっています。カンナビノイドは細分化すると主に以下のカテゴリーに分類できます。
・Δ9-THCタイプ(18種類)
大麻の有効成分としてもっとも有名かつ主要なカンナビノイドです。いわゆる「ハイになる」効果がありますが、痛みや吐き気の緩和、けいれんの抑制、食欲増進といった効果があります。
・Δ8-THCタイプ(2種類)
Δ9-THCタイプの酸化により生まれる副産物とされており、Δ9-THCタイプの70~90%程度の薬理作用があるといわれています。
・CBDタイプ(8種類)
THCに次いで有名なカンナビノイドで、日本に流通する大麻製品はこちらのタイプです。さまざまな疾患に対する薬効が確認されているほか、骨の成長促進作用も確認されています。
・CBCタイプ(8種類)
カンナビクロメン。まだまだ研究途中ですが、疼痛の緩和、抗炎症作用、ガン腫瘍の抑制、骨の成長促進作用などが認められています。さらに神経の新生にも関与していることが示され、神経変性疾患治療の活用に期待されています。
・CBEタイプ(5種類)
カンナビエルソイン。薬理作用は知られておらず、CBDなどカンナビノイドが酸化することで発生する成分です。
・CBLタイプ(3種類)
カンナビシクロール。精神作用はないとされており、薬理作用はよくわかっていません。カンナビノイドの酸化により生じる成分とされています。
・CBNタイプ(10種類)
カンナビノール。THCが分解することで生まれる物質です。THCと似た作用がありますが、効果は1/10程度。鎮痛、抗炎症作用のほか、睡眠補助作用が認められています。
・CBGタイプ(17種類)
カンナビゲロール。抗菌作用、抗炎症作用があるカンナビノイドです。ガン腫瘍の抑制や骨の成長促進などの効果に期待されるほか、うつ病の治療に有用であることもわかっており研究が進められています。
・CBTタイプ(9種類)
カンナビノトリオール。薬理作用は知られていない成分で、主に日本在来種、ジャマイカ種のアサなど天然アサで生成するとされています。
・CBNDタイプ(9種類)
カンナビノジオール。CBDから派生した薬理作用のない化合物です。
・未分類(22種類)
天使の贈り物、カンナビノイド
カンナビノイドの研究は今もなお積極的に進められていますが、解明されるにつれさまざまな薬効が明らかになっています。現代の医学や医療技術では対処できない症状にも、医療大麻を用いれば対応できるケースが増えており、まさに天使から送られた薬草のようだと比喩されることも。
「大麻=薬物」というイメージは、すでに古い価値観となっています。そもそも大麻の使用に寛容な欧米諸国からすると、日本のような大麻への神経質さがそもそも理解されないかもしれません。とくに大麻に寛容な米国やカナダなどにおいては、彼らからすれば大麻は「未成年者が背伸びをしてこっそりタバコを吸った」程度の認識なのですから。
とはいえ今の日本において、大麻が法律で厳しく取り締まられているのは事実です。法律で規定されている以上、違法成分を含む大麻を所持したり売買したりすることはできません。
CBDなど医療大麻の有用性を正しく知るとともに、ルールを守り正しく運用するモラルが試されます。
まとめ
大麻特有の成分であるカンナビノイド。それはまだすべてが解明されていないミステリアスな存在です。しかしカンナビノイドは決して我々に甘い言葉をささやく悪魔などではありません。それはむしろ、病の苦しみから解放してくれる天使の安らぎのようです。
大麻を知り、正しく使う。
それでこそ社会や人類は、医療大麻の恩恵を正しい形で授かるのでしょう。
引用元
(参考文献、URL、URKページ タイトル記載)
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/
https://core.ac.uk/download/pdf/230133454.pdf