はじめに
「アントラージュ効果(Entourage effect:アントラージュエフェクト)」という言葉をご存知でしょうか?
アントラージュ効果とは「側近効果」ともいわれ、ある物質や成分それだけを摂取するのではなく他の様々な物質や成分が含まれたものを摂取することで相互作用が生まれる効果のことを指します。
実は麻に含まれるカンナビノイドの利用にもアントラージュ効果は深く関わっています。
今回はアントラージュ効果とは何か、よく取り上げられるCBD(カンナビジオール)との関係などについて解説します。
アントラージュ効果とは?
上述のようにアントラージュ効果とはあるひとつの成分のみだけでなく、様々な成分の相互作用で生まれる効果のことを指します。
これを麻に含まれるカンナビノイドの摂取に当てはめると、例えば麻から個別に取り出されたカンナビジオール(以下CBD)やテトラヒドカンナビジオール(以下THC)だけを摂取するよりも、麻からそのまま抽出された植物が本来持つ植物性エキスとして摂取した方が多くの成分が相互的に作用することで体へのメリットや少ない副作用が期待できるというわけです。
参考URL
日本臨床カンナビノイド学会 基礎情報 医薬品とハーブhttp://cannabis.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=19142
□麻に含まれる様々な成分がアントラージュ効果を生み出す
麻やヘンプには様々な成分が含まれているのはよく知られています。
含まれている成分の多くを占めるのがCBDやTHC、カンナビゲロール(CBG)、カンナビノー(CBN)などの植物性カンナビノイドです。ほかにも植物性化合物としてテルペン(植物に色や香り、味を与える)やフラボノイド、フェノールなどの成分が含まれています。
このようにCBDやTHCなどの植物性カンナビノイドやテルペンなどの他の成分が相互に作用することでアントラージュ効果がより引き出されるのです。
□アントラージュ効果の言葉はイスラエルの博士らが最初に使用した
アントラージュ効果という言葉が使われたのは、1998年に発表されたイスラエルの博士らの研究チームが発表した論文でした。
これまで麻が示す体へのメリットには関連がないと考えられていた不活性な化学物質が、体内で生成・活性・分解される内因性カンナビノイドであるアナンダミド(AEA)と2−アラキドノイルグリセロール(2-AG)を活性化させて相乗的な効果を生み出していることを示したのです。
これをアントラージュ効果と呼んだのが始まりでした。
参考文献
Shimon Ben-Shabata a,et al;An entourage effect:inactive endogenous fatty acid glycerol esters enhance 2-arachidonoyl-glycerol cannabinoid activity,European Journal of Pharmacology,353(1),1998,pp23-31
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0014299998003926?via%3Dihub
□論文で再注目!テルペン類がカンナビノイドのメリットをより引き出す
アントラージュ効果は2011年にEthan B Russo博士の論文によって世界にもよく知られるようになりま す。
この論文では植物や果物・野菜に多く含まれ風味や香りを与える化合物であるテルペンとカンナビノイドの相乗的な効果について言及し、テルペンがアントラージュ効果にとって大切な存在であることが示されています。
ここでもカンナビノイドとテルペンが相互に作用することで痛みや炎症を抑えたり、うつ病の治療にもメリットがあることが指摘されました。
参考文献
Ethan B Russo,Taming THC:potential cannabis synergy and phytocannabinoid-terpenoid entourage effects,British Journal of Pharmacology,163(7),2011
https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1476-5381.2011.01238.x
CBDだけの摂取では一定量超えると体へのメリットが減る
アントラージュ効果について理解はできたものの、ではなぜCBDやTHCなどの成分だけの摂取よりも様々な成分が含まれていた方が、効果が期待できるのか疑問に思いますよね。
その理由をCBDの例にすると、CBDは摂取する量がある一定の量を超えると体へのメリットが大きく減少することが分かっています。
つまりCBDが多く摂取されると体は過剰な刺激を避けるために、刺激を受ける体内の受容体のスイッチを切ったり、ネットワークを遮断したりするコントロールを行います。そのためいくらCBD単体のみを摂取したとしても、ある量を超えてしまうと効果が期待できなくなってしまうのです。
しかしCBD以外の多くの成分が含まれているものを摂取するとそのようなことが起こらず、使った量に比例して体へのメリットが見られることが分かっています。
アントラージュ効果の体へのメリットを受けるためには?
アントラージュ効果の体へのメリットを多く受けるためには、例えばよく使われるCBDオイル選びでもポイントがあります。それは「フルスペクトラム」や「ブロードスペクトラム」というタイプのオイルを選ぶこと、または、CBD以外にも植物性カンナビノイドが含有しているオイルを選ぶことです。
フルスペクトラムは麻に含まれるすべてのカンナビノイドが入っている製品のことで、ブロードスペクトラムはすべてのカンナビノイドではないもののいくつかの種類のカンナビノイドが含まれている製品のことをいいます。いずれの場合も天然のカンナビノイドやほかの有効成分による相乗的な作用がアントラージュ効果となり、それを狙っているわけです。
一方でCBDを分離して取り出したCBDのことをアイソレートタイプといい、アイソレート タイプ単体を使用した製品はアントラージュ効果は期待できないといえるでしょう。
まとめ
一般的に考えるとよりCBDの純度が高いものの方が体へメリットがあると考える傾向がありますが、そうではなくカンナビノイドの摂取では様々な成分が含まれることでアントラージュ効果が期待できるということがお分かりいただけたと思います。
今後はアントラージュ効果により注目した、様々なカンナビノイドや有効な成分が含まれた製品の開発が進んでいくことが期待されています。
消費者としても体へのメリットがあるアントラージュ効果を理解して、賢明な商品選びをすることが望まれます。
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