植物の大麻草には多くの生理活性物質(微量で生き物の生理や行動に特有な作用をもたらす物質)が含まれています。
その生理活性物質の一つが、CBD(カンナビジオール)です。
CBDは、同じく大麻草から抽出されるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とは異なり、脳の作用に影響を及ぼすような働きはなく、日本ではCBDオイルなどといった健康食品として使用することができます。
今回は、今世界で注目されているCBDについてご紹介します。
CBDとは?
CBDとは、カンナビジオール(国際一般名: Cannabidiol)と呼ばれ、大麻(学名:Canabis.sativa.l)草の種や茎から取り出される天然のカンナビノイド(化学物質の総称)の一つです。植物である大麻草から抽出されるカンナビノイドは、「植物性カンナビノイド」とも呼ばれ、その種類が142以上あると言われています。
カンナビノイドには多くの種類があり、そのうちよく知られているのがテトラヒドロカンナビノール(△-9 Tetrahudrocannabinol:THC)と今回紹介するCBDになります。大麻草に含まれるカンナビノイドとしてはTHCが最も多く、次に多い成分がCBDです。
CBDは脳に作用する働きはみられない
同じ大麻草から抽出されるCBDとTHCは作用が異なります。
大麻(マリファナ)の有効な成分として知られているように、THCは脳など中枢神経系に影響を及ぼし、人の精神活動に働きを加える「向精神作用」があるのが特徴です。しかし、CBDにはTHCに見られるような向精神作用はみられないと言われています。
CBDはどのように体への作用を引き起こすのか
CBDは体の中にある「受容体」と呼ばれる部分を通して、体への作用を引き起こします。その受容体としてあるのが、カンナビノイド受容体(CB)です。
CBDが関連するカンナビノイド受容体は主に2つあり、1つ目のCB1は中枢神経系(基底核、海馬、大脳皮質、小脳)に多く存在しています。2つ目のCB2は、主に消化管や免疫機能に関わる細胞(リンパ球やナチュラルキラー細胞)に見られます。
CBDが体に取り込まれるとそれぞれの受容体に作用し、シナプスにおいて神経伝達を行う物質(神経伝達物質)を出したり、神経細胞の興奮性を調整したりします。主に作用するのはCB1・CB2受容体ですが、それ以外の受容体も介して体にさまざまな作用を及ぼし、体の炎症を抑える、痛みや不安を和らげるなどの作用を引き起こします。
CBDはどうやって体に取り込まれ排出されるのか?
CBDを体に取り入れる時は、経口摂取が主になります。
一度体内に取り込まれたCBDの代謝については、実はあまりよく知られていないのが現状です。体に取り込まれたCBDの多くが肝臓から体内に吸収されると言われており、CBD自体が水に溶けない性質を持っているため、消化管での吸収は不規則的であるとも言われています。
体に取り込まれたCBDは、そのままの形か、もしくはほかの代謝産物となって体の外へ排出されます。動物実験などでは、CBDを摂取して数時間のうちに血中濃度(血液の中に有効な成分がどれくらい含まれているか)が高くなり、その後は少しずつ便のと中に混じって体外へ出されることが分かっています。
CBDは安心して使えるの?
CBDに含まれるさまざまな作用に注目が集まっており、日本でも「CBDオイル」や「ヘンプオイル」といった健康食品として分類されて、使用することができます。
CBDに見られる体へのメリットとして「細胞機能のバランス調整」が挙げられますが、心拍や血圧などの変化には影響は見られません。また、そのようなメリットだけでなく毒性や依存性・習慣性もないのが特徴です。
□THCが含まれるCBDは規制対象になる
CBDオイルなどを使う時に気をつけなければならないのは、法律の規制となっているTHCが含まれている製品は使うことができないということです。大麻草に含まれるカンナビノイドのうち、THCなど精神に強い作用をもたらす成分が含まれるものは法律の規制対象となるため使うことはできません。
大麻草の成熟した茎から取り出されたCBD製品であれば、規制の対象にはなりません。
まとめ
CBDは、大麻草から抽出されるカンナビノイドの一つで、体に取り入れると細胞機能のバンスを調整するなど体にとってのメリットがあります。
日本でも、CBDオイルなど健康食品として手に入れることができますが、大麻草の茎や種子からの抽出されるCBDの量が少ないため、値段もお手頃とはいえないかもしれません。
CBDが抽出されるのが大麻ということもあり、大麻と聞くと「違法薬物」を思い浮かべる人が多いと思います。そのため、CBDに関する詳しい知識がないと誤解して敬遠することもあるでしょう。
現在世界の国々では、CBDを医薬品として用いるために法的な規制を緩和しているところもあり、CBDに見られる医療的なメリットも今後も注目されていくでしょう。
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引用元
世界保健機関(WHO)、薬物依存に関する専門委員会(ECDD)「カンナビジオール(CBD)事前審査報告」2017
http://cannabis.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20171206225443-F93DD6CFE8B1C092970601FFD88BDBE2E5F96AE8B22F18642F02F65C6737547F.pdf
日本カンナビジオール協会 「Q&A」
http://www.j-cbd.org/faq.html
渡辺正仁他,カンナビジオールの治療効果とその作用機序,保健医療学雑誌9(2)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalliedhealthsci/9/2/9_112/_pdf/-char/ja
厚生労働省 千穂厚生局 麻薬取締部 「CBD(カンナビジオール)を含有する製品について」
http://www.ncd.mhlw.go.jp/cbd.html
一般社団法人日本化粧品協会「カンナビノイド審査委員会」