カンナビノイドとは、薬用植物であるアサ(大麻)に含まれている生理活性物質の総称です。生理活性物質は、微量でも生物の生理や行動に特徴的な作用を示し身体の働きを調整します。そのため、カンナビノイドも微量で生物の体に様々な作用を及ぼします。
カンナビノイドには鎮痛など人体に有益な作用もあり、日本では大麻の使用は法律で規制されているものの、海外では治療として用いられているところもあります。
今回は、カンナビノイドとは何かについて徹底解説していきます。
カンナビノイドとは?
カンナビノイド(Cannabinoid)をもう少し詳しく言うと「大麻(アサ(cannabis sativa)の未熟果穂を含む枝先および葉)に含まれる炭素数21の化合物群」[※1]のことで、構成としては酸素や水素、炭素から成り立っています。
薬用植物のアサは、一般に「大麻・麻・大麻草・マリファナ・ヘンプ・カンナビス」ともいい、アサに含まれる生理活性物質の総称であるカンナビノイドは「植物性(植物由来)カンナビノイド」と呼ばれることもあります。
□カンナビノイドは104種類存在する
実は、アサにはカンナビノイド以外にも500種類以上の化合物が含まれており、その中でもカンナビノイドは104種類が確認されています。
カンナビノイドの3大主要成分
104種類あるカンナビノイドのうち、代表的な成分として以下の3つが挙げられます。
・テトラヒドロカンナビノール(THC)
・カンナビノール(CBN)
・カンナビジオール(CBD)
それぞれの成分について解説していきます。
□主要成分1:テトラヒドロカンナビノール(THC)強い中枢作用が特徴
テトラヒドロカンナビノールは、カンナビノイドに含まれる成分のうち精神活性効果がある物質として有名な成分で、1964年にイスラエルの化学者によって同定されました。
いわゆるマリファナにはTHCが3〜25%程度含まれるとされ、痛みの緩和や痙攣抑制などの効果だけでなく、時間・空間感覚の混乱、大きな幸福感や満足感、幻覚などの精神神経反応を引き起こすことでも知られています。
□主要成分2:カンナビノール(CBN)鎮静作用が期待できる
上述のテトラヒドロカンナビノール(THC)の酸化・分解によって生じる成分です。
新鮮なアサからは採取されませんが、採取されたアサが劣化して光や空気に晒されることでアサに含まれるカンナビノールの含有量が増えるとされています。
THCに比べて10分の1程度の穏やかな精神作用があり、鎮静や痛みの緩和、炎症の抑制などの作用が注目されています。このカンナビノールの鎮静作用に着目し、睡眠導入剤としての効果も期待されています。
□主要成分3:カンナビジオール(CBD)最も多く使用される成分
カンナビノイドの中でも最も多く使われているカンナビジオールも、THCに見られるような強い精神作用はなく、依存性や乱用性はないとされています。
作用としては、不安を和らげる、痙攣を抑える、神経を保護するなどの作用があります。
短期記憶喪失や認知症予防・改善効果にも期待されており、世界的に見ても欧米を中心にして医薬品や健康食品などに広く応用されており、その安全性が認められている成分ともいえるでしょう。
カンナビノイドは体にどう作用するのか?
では、カンナビノイドはどのように人の体に作用するのでしょうか。
カンナビノイドは、体内に分布している特異的受容体である「カンナビノイド受容体」を介して体に影響を及ぼします。
このカンナビノイド受容体には、カンナビノイド受容体1(CB1)とカンナビノイド受容体2(CB2)があり、CB1は中枢神経、CB2受容体は末梢神経系に広く分布しています。
カンナビノイドが喫煙や気化、経口摂取などにより体内に取り込まれると、カンナビノイド受容体と結合し、周辺の細胞へカンナビノイドからの情報を伝達させ、作用を引き起こすのです。
体内に取り入れられたカンナビノイドは最終的には肝臓で代謝されます。
内因性カンナビノイドと合成カンナビノイドとは
カンナビノイドにはここまで説明した植物性カンナビノイドとは別に「内因性カンナビノイド」、「合成カンナビノイド」と呼ばれるものがあります。
□内因性カンナビノイドは体内で合成される
内因性カンナビノイドは、体内で合成されるカンナビノイドのことで、カンナビノイド受容体1やカンナビノイド受容体2とともに「内因性カンナビノイド系」を構成し、神経伝達物質の放出の調節や痛み知覚などの生理学的なプロセスに関わっています。
いわゆる「脳内マリファナ類似物質」とも言われる内因性のカンナビノイドは10種類ほど同定されており、体内のホメオスタシス(内部環境を一定に保ち続ける)や健康の維持などに役立つと言われています。
□合成カンナビノイドは人工的に作られる
合成カンナビノイドは、人工的・化学的に合成されたカンナビノイドのことで、研究で使われることもありますが、いわゆる「危険ドラッグ」として社会問題にもなっているものでもあります。
合成カンナビノイドは、植物性カンナビノイドの主要成分のうちTHCの効果を模倣するように作られたものでもあり、植物性カンナビノイドと比較して体に何倍もの影響と危険をもたらすため、類似する物質は指定薬物として規制を受けています。
まとめ
カンナビノイドは、薬用植物のアサに含まれる生理活性物質で、微量でも体に様々な作用を及ぼします。主要な成分であるカンナビジオール(CBD)などは海外ではすでに医療用に活用されており、CBDオイルは日本でも使用することは可能です。まだあまり馴染みのないカンナビノイドに対して、その成分の種類や作用を十分理解していくことが求められているといえます。
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引用元
株式会社朝日新聞社 kotobank「生理活性物質」
https://kotobank.jp/word/生理活性物質-163006
[※1]公益社団法人日本薬学会 薬学用語解説「カンナビノイド」
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?カンナビノイド
株式会社農業技術通信社 農業ビジネス 「大麻草の品種とTHC(マリファナ成分)」
https://agri-biz.jp/item/detail/7658
森元聡;大麻に関する生薬学的研究 アサはなぜ・どのようにカンナビノイドを生産しているのか,ファルマシア、Vol.52,N0.9,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/52/9/52_832/_pdf/-char/ja
一般社団法人日本薬用植物研究推進協会「大麻草の成分(カンナビノイド)について」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/151120higashikawatown_shiryou03.pdf
日本臨床カンナビノイド学会 基礎情報「カンナビノイド(Cannabinoids)」
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=19134
日本臨床カンナビノイド学会 基礎情報 「用語集」
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=19146
一般社団法人日本カンナビジオール協会 「カンナビジオール(CBD)とは」
山本経之;カンナビノイド受容体ー中枢神経系における役割,日薬理誌,130,135-140,2007
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/130/2/130_2_135/_pdf/-char/ja
大和製品株式会社 ドクターからの健康アドバイス「植物性カンナビノイドを使用して内因性カンナビノイド系を調節し、他の器官に良好な影響を与えることができるか?」