
アメリカ政府の大規模研究によると、大麻の使用が認知能力の維持や向上に関与する可能性があることがわかりました。
大麻と脳の新しい発見
これまでの研究で、大麻に含まれるカンナビノイド(CBDやTHCなど)と認知機能の関係については、様々な議論がされてきました。大麻の使用は脳には悪影響を及ぼすと考えられ、特に若い世代では、記憶力や学習能力に悪影響を及ぼすのではないかという意見が一般的です。
しかし最近の研究では、高齢者においては逆に脳の老化を遅らせ、認知機能の維持を助ける可能性が示されつつあります。CBDやTHCの働きが、年齢に伴う認知の衰えに対して新しいアプローチになるかもしれないのです。
これまでの常識がくつがえる
高齢者と若者の脳は性質が異なります。高齢者は神経細胞の老化や炎症が進みやすくなっており、これが認知機能の低下につながります。
今回の研究では何千人ものデータを分析した結果、大麻を使用した経験のある高齢者は、使用経験のない高齢者に比べて特定の認知テストでより良い成績を示していることがわかりました。これは、大麻の成分が高齢者の脳の健康をサポートする可能性を示しています。
中年~高齢者の脳に特によい効果
この研究は2025年8月に公開されたもので、44歳から81歳までのイギリス人37,929人の脳画像と認知データを分析したものがベースとなっています。
研究チームは、大麻使用者がさまざまな認知テストで非使用者を一貫して上回っていることを発見しました。これは大麻の使用が、通常若い人に見られる脳ネットワークのパターンと関連している可能性があることを示唆しています。
論文では「これらの発見は、大麻の使用が、神経の老化プロセスの減速や、高齢者の認知機能の維持と関連している可能性があることを示唆している」と述べられています。

なぜ脳に良い影響を与えるのか?
私たちの体には、エンド・カンナビノイド・システム(ECS)という、体内のさまざまな機能のバランスを保つための仕組みが備わっています。ECSは気分や感情、免疫反応、食欲、記憶と学習などさまざまな機能の調節に関わり、内因性カンナビノイド(アナンダミドや2-AGなど)と、それを受け取る受容体(CB1、CB2など)や、それらを分解する酵素で構成されています。
大麻の成分であるカンナビノイドは、よく知られているところではテトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)などがありますが、これらはECSに作用することで脳機能に影響を与えます。
ECS(エンド・カンナビノイド・システム)は、体内で作られるカンナビノイドと結びつき、脳内の神経伝達をスムーズにします。これにより、脳の健康や働きを保つ大切な役割を果たしています。大麻に含まれるカンナビノイドは、内因性カンナビノイドを補う形で受容体に結合します。
- THC: THCは体の受容体に結びつくことで、気分が高まったり、幸せな気持ちになるといった作用を引き起こします。ただし、依存や精神的な影響のリスクがあるため、使い方には注意が必要です。研究では、THCが神経細胞を守ったり、新しい神経細胞の成長を助ける可能性も示されています。なお、日本ではTHCは法律で規制されています。
- CBD: THCのような精神作用をもたらさず、優れた抗酸化作用や抗炎症作用があることがわかっています。これらは、加齢とともに増加する酸化ストレスや炎症から神経細胞を保護し、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の予防・治療につながる可能性が期待されています。また、CBDは気分を高揚させることなくリラックス効果をもたらし不安やパニック症状の軽減にも役立つとされています。
「認知能力の向上」って何?
大麻使用が「認知能力の向上」につながるとは、具体的にどういうことなのでしょうか。
今回の研究では、以下のような能力が向上していることが明らかになりました。
- 記憶力: 単語を記憶し、後で思い出すテストで、大麻を使用しない人よりも良い成績を示しました。
- 処理速度: 複雑な情報を素早く処理するスピードが向上しました。
- 実行機能: 計画を立てたり、複数のタスクを同時にこなしたりする能力が向上しました。
さらに4月に発表された薬局のデータに基づく報告書によると、医療用マリファナを使用したがん患者の思考力が向上したと報告しています。これはマリファナが痛みを和らげる作用があることから、認知能力の向上だけでなく、患者がよりクリアに考えられるようになったということも考えられるかもしれません。
もちろん、これらの研究は「大麻を使えば頭が良くなる」という単純な因果関係を証明したものではありません。しかし大麻が脳機能に与える影響について、今後の研究の方向性を大きく変える、とても興味深い結果ではないでしょうか。

CBDが使いやすい理由
大麻の主な成分であるTHCとCBDのうち、日本でも安心して入手可能なCBDについてのメリットについて以下のご紹介します。
「ハイ」にならない: CBDにはTHCのような精神作用がなく、日本を含め多くの国や地域で法律に触れることなく使用することができます。そのため、高齢者だけでなく多くの人が安心して使用することができます。
安全性が高い: WHO(世界保健機関)もその安全性を認めており、副作用が少なく、他の薬との飲み合わせの問題も比較的少ないとされています。
様々な効果: CBDは抗炎症、抗酸化、気分を落ち着かせ不安を和らげるなど、様々な効果が期待されています。認知機能の低下は一つの原因だけでなく、色々な要因で起こるため、CBDの幅広い作用が役立つ可能性があるのです。また優れた炎症効果はアスリートの筋肉疲労回復や怪我のケア、そして関節炎などの痛みまでさまざまな症状に作用します。
使うときの注意は?
安全性が高いとされているCBDですが、いくつか気をつけたいことがあります。
- 最初は少量から: 各製品には服用ガイドラインが示されています。まずは少量から始めて、体の変化をゆっくりと観察しましょう。アルコールやタバコと同じく、成人前の人は医師の指示がない限り使用を控えましょう。
- お医者さんに相談: もし今、何か病気で治療を受けていたり、他の薬を飲んでいる場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
- 信頼できる製品を選ぶ: 品質が保証されている、信頼できる製品を選ぶことが大切です。製品に成分分析(ラボテスト)の結果が記載されているか確認し、有害な物質が含まれていないかチェックしましょう。
- THCが入っていないか確認: 日本ではTHCは違法です。THCが一切入っていない製品を選びましょう。
まとめ
今回は、大麻の成分が認知機能のサポートに役立つ可能性についてご紹介しました。人生100年時代、ただ長く生きるだけでなく、脳の老化を遅らせ、健康に過ごすことがますます重要になっています。大麻成分がそのサポートに役立つかもしれないという今回の発見は、これからの高齢化社会において大きな希望になるでしょう。
<参考資料>