
国連の最新報告書によると全世界で現在2.6億人もの人が大麻を使用しており、その数は年々拡大しています。この現状を分析した国連は、大麻の厳しい取り締まり政策は効果が薄く、むしろ問題を悪化させていると警告しています。
そもそも、なんで大麻は違法になった?
もともと大麻草は古代から薬草や宗教儀式の道具、繊維の原料として世界各地で使われてきました。健康や暮らしのさまざまなシーンで役立つ植物として、大切に扱われてきたのです。ところが20世紀に入ると状況は一変します。国際的なルールの整備とともに大麻への規制が一気に強まり、多くの国で厳しく取り締まられるようになりました。
この変化の背景には、いくつもの要因が複雑に絡み合っています。たとえば、当時の政治的な思惑や人種差別的な偏見、そして科学的な根拠に乏しいままに広められた健康被害のイメージなどです。この影には酒造業界の思惑も関係していたという説もあります。
メディアも「大麻は狂気をもたらす危険な薬物」とセンセーショナルに報道し、不安をあおったことで、大麻に対する否定的な認識が急速に広がっていきました。その結果、1961年に採択された「麻薬に関する単一条約」などの国際条約によって、大麻は厳しい規制の対象に。医療や産業といった正当な用途でさえも厳しく制限されるようになっていったのです。

なぜ利用者が増えているのか?
近年、大麻を使う人が世界的に増えているのには、いくつかの背景があります。まず注目したいのが、大麻に対する社会の見方が変わってきたことです。かつては「危険な薬物」というイメージが強かった大麻も、今では医療効果や痛みの緩和、リラックス作用、安眠への効果などが広く知られるようになり、健康志向の高まりとともに若い世代を中心に抵抗感が薄れてきています。
さらに、医療大麻を認める国が増えたことで信頼性が高まり、アメリカの一部やカナダ、ドイツなどでは嗜好用の大麻までもが合法化されるなど、国際的な規制の緩和も利用者増加の大きな要因です。「合法=安全に使えるもの」という意識が広がることで、大麻に対する関心を持つ人が増えているのです。
また、現代社会ではストレスや不安を感じる人が多く、心のケアとしてCBDなどの大麻由来成分を生活に取り入れたいと考える人も増えています。心身のバランスを整える手段として、大麻が選択肢の一つになりつつあるのが、今の時代の特徴といえるでしょう。
こうした背景から、以前では考えられないほど多くの国が大麻規制の見直しに動き出し、合法化や非犯罪化への動きを進めています。
規制することのメリット、デメリット
大麻の規制は、良い面もあれば問題点もあります。まずメリットとしてはタバコやアルコール類と同じく乱用による健康リスクを減らしたり、若者が簡単に手に入れられないようにしたりできる点があげられます。また違法な取引を取り締まることで、犯罪の予防にもつながります。
全ての人に当てはまるわけではありませんが、大麻の反復的な使用によって、健康上、社会生活上、職業上などの問題が生じているにもかかわらず、大麻の使用をやめられなくなる大麻依存症による心身へのダメージも、アルコール乱用などと同じく無視することはできません。
ただし規制が厳しすぎるとかえって闇市場が広がり、どんな成分が入っているかわからない危険な大麻が出回ることもあります。さらにごく少量の所持でも刑罰の対象になると、個人の人生に大きな影響が出ることもあり、警察や刑務所の負担が増えるなど行政にも負担が増えてしまいます。大麻との向き合い方は、ただ禁止するのではなく、健康や安全を守るためにどうすればいいかを考えることを優先という意見も多く聞かれるようになりました。
大麻所持が全て違法であることで逮捕される人も多く、刑務所も過密状態に陥っています。しかし、こうした厳罰化が濫用を減らしたり真の犯罪低下につながっていないというのが現状です。むしろ非合法の取引を増やして犯罪組織に資金を提供し、品質管理のない危険な製品が流通する温床になっていることも問題視されています。国連はこうした現状を踏まえ、「厳罰ではなく、規制の見直しが必要」と訴えています。
世界の成功例から学ぶ
大麻の合法化は、単なる法律の緩和にとどまりません。実は、国や地域の経済にとっても大きな追い風となっているのです。これまで地下に隠れていた大麻市場が、法のもとで見えることで新たな産業が生まれたのです。
たとえば大麻の栽培から加工、販売までの一連の流れには、多くの雇用が生まれます。これまで存在しなかった職種が増え、人々に働き口を提供しているのです。いち早く合法化に踏み切ったアメリカ・コロラド州では、嗜好用大麻の合法化によって、年間数億ドルの税収を確保。そのお金は学校や地域福祉に役立てられ、「大麻が地域を支える」という世界が実現しています。
さらにカリフォルニア州では大麻ビジネスが大きく拡大し、年間10億ドル以上の税収を生み出す巨大産業に成長。農家や小売店、加工業者など、多くの企業が市場に参入し、地域経済の大きな柱になっています。また、国として合法化に踏み切ったカナダも、安定した税収と雇用の確保に成功しています。加えて、犯罪組織の資金源だった闇市場を縮小できたという、治安面でのメリットもあるのです。
もちろん若者への影響や乱用のリスク、法整備の遅れといった課題はまだ残されていますし、国によって事情も大きく異なります。それでも、実際に合法化を進めた国々の成功事例を見ると、大麻産業が経済に新しい活力をもたらしていることは確かです。慎重な運用が前提にはなりますが、大麻の合法化はこれからの時代における経済成長の一つのカギになるかもしれません。
大麻由来成分CBDのこれからの可能性

大麻の合法化が進むことで、大麻の成分や効果についての研究も進んでいます。その中でも特に注目されているのが「CBD(カンナビジオール)」です。CBDは大麻に含まれる成分の一つですが、他の成分と異なり精神を高揚させることがなく、医療や健康、美容の分野で役立つさまざまな作用があります。
多くの国で、大麻自体は規制対象でも副作用の少ないCBDは合法として認められており、様々なCBD製品が市場に登場しています。規制が緩和されることで、製品の品質管理や流通も改善され、ユーザーの信頼も高まります。
その結果、市場はますます成長し新しい商品やサービスも次々と生まれています。健康に関心のある人にとって、安全で選びやすいCBD製品が増える、明るい未来が期待できるでしょう。
まとめ
日本では大麻は今も厳しく禁止されています。しかし世界の動きを受けて、CBD製品への関心や期待はこれまでにないほど高まっています。また、政府もがんや重度のてんかん、難病に効果が期待される医療大麻の解禁に向けて動き始めています。国連が警告するように、厳しい取り締まりだけでは問題は解決しない段階にさしかかっています。世界中で進む規制緩和は、安全や健康を守りながら、新たな経済や医療の可能性も切り開いているのです。
<参考資料>
https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/world-drug-report-2025.html