産業ヘンプ=大麻草から抽出される成分CBD(カンナビジオール)とCBG(カンナビゲロール)は、医療や健康製品の分野で現在脚光を浴びていますが、それぞれには違った特徴があります。これらの薬理成分が体内でどのように働くのでしょうか。
カンナビノイドとは
大麻草(学名:Cannabis sativa L.)に含まれる生理活性物質カンナビノイドは、最近、医療分野などで注目されている成分です。カンナビノイドとは大麻草に含まれる100種類以上の化合物の頃を指します。また、私たちの体の中にも内因性カンナビノイドと呼ばれる体内で作られたカンナビノイドが存在します。これらのカンナビノイドは、体内のシグナル伝達システムである「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」を通じて作用します。ECSは、食欲、睡眠、気分、痛み、免疫など、さまざまな生理機能のバランスを整えます。カンナビノイドがこのシステムに作用することで、健康や美容に役立つとされています。
1960年代、大麻の化学成分の研究を開始したのは2023年に他界したイスラエルの科学者ラファエル・メコーラム博士でした。彼の研究により、大麻に含まれるカンナビノイドの特性や効果に関する知識が広まり、医療大麻の発展に大きく貢献したのです。
大麻に対する警戒の声はよく聞かれますが、その理由の1つは、大麻に含まれるカンナビノイドの1つであるTHCが日本や多くの国で規制対象となっているからです。
THCは大麻喫煙によって「ハイ状態」と呼ばれる精神を高揚させる作用があります。そのため、アルコールを摂取した時のように陶酔状態になる副作用があります。一方で、優れた鎮痛効果や制吐作用があり、病人の食欲を高め、栄養不良や体力低下を防ぐなどの効果もあります。
しかしTHCの持つ陶酔作用のため、合法化されている国はまだ限られており、多くの国ではTHCの使用や所持が規制されています。
健康に役立つカンナビノイドの注目株!
近年、医療・健康分野で注目を集めているカンナビノイド。その中でも、CBD(カンナビジオール)とCBG(カンナビゲロール)は、そのマルチな働きと可能性から特に注目されています。
〜カンナビノイドの母「CBG」〜
大麻草に含まれる100種類以上のカンナビノイドの中でも、CBGは特別な存在です。ほとんどのカンナビノイドは生成過程でCBGから始まり、変化していきます。そのためCBGは「カンナビノイドの母」と呼ばれています。精神活性効果を持たず安心して使うことができるほか、抗菌性が高く、さまざまな疾患に効果がある可能性示唆されています。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)やハンチントン病(遺伝性の病気)に対するCBGの効果が注目されています。これらの疾患に関連する炎症や神経変性を軽減する可能性があります。またラット実験ではがん細胞や腫瘍の増殖を抑えることも分かっています。
CBGはドーパミンレベルを上昇させ、睡眠と食欲の調節をサポートする可能性がありますが、現在のところ
ヒトでの実験例は限られており、さらに多くの研究と臨床研究を行う必要があります。
このCBGは収穫時期が遅れると他の成分に変化してしまうため、抽出が難しく貴重な成分です。大麻草に含まれるCBGとCBDの量には10倍以上の差があるといわれます。そのためCBGを含む製品は限られており、高品質のCBG製品を見つけることが難しい場合があります。
〜幅広い可能性を秘めたCBD〜
CBDは生産量も多く、また最も研究が進んでいるカンナビノイドです。精神活性作用がないため、健康や美容、ペット治療など幅広い可能性があり、多くの人々の関心を集めています。日本をはじめ多くの国で合法になっており、サプリメントとして生活に取り入れる人も増えています。
CBDには抗炎症作用、リラックス作用、鎮痛や炎症緩和、多発性硬化症やてんかんの発作を抑えるといった効果があります。そのためCBDを使った製剤も開発されています。
また抗酸化作用や抗炎症作用を持つためシミやシワの発生、皮膚炎などの炎症を抑制し、肌トラブルの改善やアンチエイジング効果も期待できます。このため、さまざまなCBD配合のコスメが作られ、美容マニアの間で話題となっています。
このように、CBGとCBDには共通する部分も多いものの、その成り立ちや作用は異なっているのです。
CBDとCBGを生活に取り入れるには
ストレスや安眠解消、美容や健康のために、これらの成分を取り入れてみたいと考える方も多いのではないでしょうか。
CBDとCBGは、様々な方法で取り入れることができます。
- オイル
CBDやCBGオイルは、最もポピュラーな摂取方法です。舌下に垂らして数分間含むことで、粘膜から吸収されます。オイルは、キャリアオイル(MCTオイル・ヘンプオイルなど)にCBDやCBGを配合したものです。濃度やフレーバーも種類が豊富で、自分に合ったものを選ぶことができます。 - カプセル
カプセルは持ち運びしやすく、オイルよりも手軽に摂取できるのがメリットです。水と一緒に飲むだけで良いので、外出先でも簡単に摂取することができます。オイルよりもゆっくりと効き目が現れ、緩やかに効果が持続すると感じる人が多いようです。 - 食品
CBDやCBGを配合した食品も販売されています。海外ではグミ、チョコレート、クッキー、ドリンク類など様々な種類があり、おやつ感覚で楽しく摂取することができます。ただし、手軽さゆえに量の把握やコントロールがしにくく、適量を摂取し続けるのが難しいと感じる人もいます。 - 化粧品
CBDやCBG配合の化粧品も人気です。クリーム、美容液、バームなど、様々な種類があります。肌に塗ることで、CBDやCBGを直接皮膚に作用させることができます。肌に塗るコスメばかりだけでなく、シャンプーやバスボムといった製品も見つけることができます。 - 電子タバコ
CBDやCBG配合の電子タバコリキッドも販売されています。こちらは吸引することで、肺から直接的にCBDやCBGを吸収することができます。ただし、電子タバコの健康への影響はまだ十分に研究されていないため、注意が必要です。
CBDとCBGサプリメントの上手な選び方
CBDとCBGを選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
信頼できるメーカー:品質の高い製品を選ぶために、信頼できるメーカーの製品を選びましょう。
濃度:CBDやCBGの濃度は、製品によって異なります。自分のニーズに合った濃度の製品を選びましょう。初心者は低めの濃度と量でテストし、量を増減することで自分にベストな摂取量をみつけましょう。、
成分:成分表を確認し、THCなどの規制成分が含まれていないか確認しましょう。また第三者によるラボテストの結果を確認することもおすすめです。
フレーバー:オイルやカンナビス配合食品には、独特の風味をカバーするためフレーバーを加えたものあります。自分の好みに合うフレーバーを見つけましょう。
まとめ
CBDとCBGは安全性の高い成分ですが、まれに副作用が現れることがあります。主な副作用は口が渇く、眠くなる、めまいなどがあります。また他の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。服用中の薬がある場合は、医師に相談することをお勧めします。健康のために正しい使い方を心がけましょう。