大麻は長い歴史の中でアーティスト、文学者、音楽家たちと親密な関わりがありました。大麻に含まれる成分が人間のクリエイティビティにどのように役立つのか、その謎に迫ります。
シェイクスピアは大麻愛好者だった?
大麻草は古代から繊維として利用されたり、薬草として親しまれてきました。そして歴代の芸術家や音楽家、そして現代のカウンターカルチャーにも大きな影響を与えています。これは大麻草に人々の精神に影響を与える作用があり、彼らのインスピレーションを刺激するからだといわれています。
「ロミオとジュリエット」や「ハムレット」などの世界的名作を生み出した英国の文豪シェイクスピアも、自宅の敷地内から見つかったパイプの残留物を研究したところ、当時の英国の風習にならってパイプで大麻を嗜んでいたことが分かっています。
また50〜60年代にかけて人気を博したアメリカのビートジェネレーションの作家たちは、クリエイティブな創造性の源として大麻をひんぱんに利用し、作品の中でも大麻の存在に触れていました。70年代のレゲエ・ミュージシャンであり、ラスタファリ運動の提唱者として知られるボブ・マーリーも大麻を愛用していたことが広く知られています。
大麻には人間の意識や精神状態に影響を与える成分が含まれています。しかし大麻を摂取したからといって突然クリエイティブな才能に目覚めるわけではありません。
最近の科学では大麻に含まれる成分の解明が進んでおり、人間の持つ創造性と大麻成分の不思議な関係についても徐々に解明されつつあります。
リラックス効果とインスピレーション
多くのアーティストが、大麻を吸うことで創造性が高まり、ユニークなアイデアがひらめいたりすると証言しています。その一方で、長期にわたる大麻喫煙は記憶力や集中力といった脳の機能に悪影響を与える可能性についても指摘されています。
大麻に含まれる物質の中で人間の精神に大きく影響を与えている成分は、THC(テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれる物質です。THCは大麻に100種類以上含まれる生理活性成分カンナビノイドの1種で、精神を高揚させいわゆる大麻喫煙の「ハイ」の状態を作り出します。精神を高揚する、つまり気が大きくなったり、緊張状態が緩むことで、常識に囚われない自由で発想やより深い洞察ができる状態になることがあります。芸術家やミュージシャンたちは、このようなTHCの作用と自らの才能を融合させて、クリエーションを生む環境を作り出していると言えるでしょう。
1960年代のカウンターカルチャーの洗礼を受けて育ったアップル社の創業者スティーブ・ジョブズ氏も、大麻が心身をリラックスさせ、創造的にしてくれることについて語っています。
また最近注目を浴びているカンナビノイドCBD(カンナビジオール)は、THCのように気分を高揚させたり認知機能を低下させることなく、深くリラックスした状態を作り出すことができます。このCBDの効果も、創作の集中力を高める役割を果たす可能性があると考えられます。
お風呂やシャワーを浴びている時に、突然いいアイデアが浮かんでくる経験をしたことがある人は多いかもしれません。これは心と体がリラックスすることで、ストレスや緊張が和らぎ、頭がクリアになり、脳がアイデアを生み出しやすい状態になるからだと言われています。
大麻にはカンナビノイドやテルペン、フラボノイド類をなど数百種類におよぶ成分が含まれています。これらの成分が相互作用しながら、常識の壁を超えたクリエイティブな思考活動をサ作り出しているようです。
「反逆の印」からセルフケアの注目アイテムに
古代から大麻は産業作物であり嗜好品としても使用されていましたが、20世紀半ばに入ると麻薬として禁止され、非合法の対象とされるようになりました。
1950年代から1900年代までに大麻を使用していた人々の中には、体制に反発し自由奔放な生き方を求めて、反逆の印として大麻を手にする人も多くいました。
しかし時代は移り変わり、北米大陸では過去10年間で大麻がかなり一般的な存在として受け入れられるようになっています。カナダでは18歳以上の成人大麻の使用がいち早く合法化され、アメリカ合衆国でも州ごとに合法化が進んでいます。
大麻の主要成分であるカンナビノイドには、様々な健康効果があるとされています。てんかんや多発性硬化症などの発作を抑えるほか、リラックス効果があり、炎症などの痛みを和らげたり、不眠症や不安障害などの症状を緩和したり、HIV治療やがんの化学療法によって起こる吐き気や食欲不振の緩和する効果もあります。
現在では創作活動や反逆のためよりも、セルフケアや病気治療のために大麻や大麻関連の製品使う人の方が増えているのです。またミュージシャンやアーティストが創作のために大麻を利用することは古くからありましたが、最近では大麻によって精神を高揚させず、ストレス解消やリラックスの効果をピンポイントで得るためにCBD製品を愛用するアーティストやスターも増えています。
まとめ
本記事では、大麻に含まれる成分が創造的な思考やユニークなアイデアを生み出す脳の一部を活性化する仕組みについてご紹介しました。
研究が進むにつれて、大麻への見方も大きく変わりつつあります。かつては麻薬としてのネガティブなイメージが強く、社会的には非合法とされていました。しかし、最近の研究や法的な変化により、大麻の潜在的な利点やビジネスの可能性がより注目されています。
とはいえ大麻や大麻由来成分の使用には国やエリアによってそれぞれ法的な制約があります。例えば日本では、大麻の使用は大麻取締法によって禁止されています。 しかしTHCを含まず、規定に沿って作られたCBD製品に関しては医療目的やサプリメントとして合法的に利用することができます。
また、大麻の使用には医薬品などと同様、副作用やリスクも存在します。このため専門家に相談したり、正しい知識を得た上で使用することも大切です。安全性とルールを理解した上で、リラックスタイムのお供や病気の改善、創作タイムの集中サポートなど生活に役立てみてはいかがでしょうか。
<参考資料>