2023年1月20日、世界最大手の検索エンジン企業Google社は広告規則を改訂し、アメリカ食品医薬品局(FDA)が認可したCBDを含む製品の販売促進を許可すると発表しました。
GoogleでCBD広告が出せる時代到来?
米アルファベット傘下の検索エンジン最大手グーグルは来年1月、大麻由来成分であるCBD(カンナビジオール)製品の一部について広告掲載を開始することを発表しました。
米国で大麻が合法化され、すでに合法なサプリメントとして広く親しまれているCBDの販売促進広告をテスト運営し、デジタル広告上の法の抜け穴などがないかをチェックする目的があると言われています。
2023年1月20日時点では、以下の制限が解除されています:
①CBDを含むFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けた薬、
②THC0.3%以下のヘンプ由来の局所用CBD製品、
外用薬としてのCBDを販売する企業は認証を受ける必要があり、これには製品ラボテストの提出やサードパーティーの分析証明書の提供などが条件づけられます。
サプリメントや食品添加物、吸入器に関しては引き続き禁止の対象となっています。またマーケティング担当者はYouTubeなど、Google傘下のすべての広告フォーマットを利用できない場合があります。
CBD製品販売の半数以上がオンラインで行われていることを考えると、これまでGoogle広告がなかったことが意外にも思えます。大麻関連の広告に関する規制は曖昧なことが多く、これまでは広告規制があったにもかかわらず言葉の使い方によっては通ってしまったりすることもあり、長らくグレーゾーンの扱いでした。グーグルが正式に認定を受けた一部の製品への広告出稿への扉を開くという決定は大きな一歩となります。
今回のポリシー変更により、CBD製品を販売する企業はより多くのユーザーにアプローチすることができるようになります。
マーケティングで必須のネイティブ広告とは?
CBD製品のマーケティングはインスタグラムやフェイスブック、TikTokなどのSNSでも広く行われていますが、直接的な広告にはあまり積極的ではないようです。日本を含め欧米の多くの国で合法であるにも関わらず、なぜSNSプラットフォームではCBD広告に消極的なのでしょうか。
その理由はCBDに対する消費者の認知度の低さにあります。CBDの人気は上昇しているもののいまだに危険な違法物質であると誤解している人が多く、そのため広告主やプラットフォームに悪いイメージを与えてしまう可能性があると考えられているためです。このため、SNSではユーザーに安心感を与える「ネイティブ広告」が好んで使われるようになっています。
ネイティブ広告とはSNS投稿やニュースのコンテンツ内に自然と溶け込んで表示される広告のことで、ユーザーに優しい作りが特徴。ユーザーが楽しんでいるコンテンツの体験を損なうことなく商品やサービスをPRできます。どんなに素敵な商品でも記事を読む際に邪魔になってしまう派手なバナー広告や、Webサイトを訪問したユーザーを追跡して広告を表示するリマーケティング広告は、ユーザーに嫌悪感を抱かせてしまう危険があります。ネイティブ広告の場合は、 ユーザーは興味や関心を持ってコンテンツを視聴している可能性が高く、広告の内容がユーザーの興味や阻害しないように作られています。
ネイティブ広告の例としては、以下のようなものがあります。
スポンサー・コンテンツ
記事やブログの中に広告主が用意したコンテンツを挿入する方法です。広告主が提供するコンテンツは記事のテーマに沿っていることが多く、ユーザーにとっても興味の持てる内容となっています。
インフィード広告
ユーザーが閲覧しているページの中に、記事や動画、画像などの形で広告を表示する方法で、リアルなコンテンツとコンテンツの間に表示される広告のことです。ページのデザインに合わせて広告を表示するため、ユーザーにとって自然な形で広告を受け取ることができます。
SNS広告
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSで広告を投稿する方法です。広告主が用意したコンテンツを、ユーザーが普段見ているフィードに表示することができます。配信先をターゲティングすることで、より効果的な広告配信が可能になります。
ネイティブビデオ広告
記事やSNSフィード内に、自社製品やサービスの紹介を動画で行う方法です。ユーザーにとって興味深い内容であることが必須で、ストーリー性のある動画が好まれます。
いずれもやり過ぎは禁物ですが、ウェブ上にいれば誰もが一度はみたことがあるタイプの広告で、時には広告であると気づかないほど自然な動線でファンを獲得しているコンテンツもあります。
CBDの効果とは
大麻草から抽出される成分CBD(カンナビジオール )は健康やヒーリング効果が高いとされ、サプリメントやドリンク、医薬品としてさまざまな製品に取り入れられています。CBDは「カンナビジオール」の略で、生理活性成分であるカンナビノイドの1種です。大麻喫煙のハイ状態を引き起こすカンナビノイドTHC(テトラヒドロカンナビノール)のように精神を高揚させる効果はなく、様々な健康メリットがあるのがうれしい特徴。
以下は代表的なメリットの例です。
炎症の抑制:CBDは、炎症を抑制する作用があり、疼痛やアレルギー反応などの症状を緩和することができます。
不安を緩和する:CBDは、不安やストレス状態などを緩和することができます。
睡眠を改善する:CBDは緊張を和らげることで睡眠の質を改善することができます。また不眠症や不安によって引き起こされる睡眠障害を改善することができます。
神経疾患の治療:CBDは、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経疾患の治療に利用できる可能性があり、研究が進められています。
がんの治療:マウス実験でCBDはがん細胞の成長を抑制することができるという研究報告があります。ほかにもがんの疼痛コントロールや、化学療法の副作用によって起こる吐き気を抑える効果も認められ、臨床で既に使われています。
これらはメリットの一部であり、科学的なエビデンスがまだ不十分なものもあります。しかし健康意識の高まりやウェルネスブームとともに研究が進み、世界のCBD市場は急速に拡大しています。大麻を解禁した国やエリアも増えつつあり、ヒーリングやウェルネス体験を売りにしたツアーも盛況です。
「いかにも広告」回避術。SNSのマーケティング戦略
SNS広告は手軽で拡散しやすいというメリットがありますが、プラットフォームのルールに違反した場合、たとえ成分が合法であっても違法薬物の広告を行ったのと同じ条件で規制を受けて投稿が削除され、広告に費やしたお金を失ったり、時にはアカウント自体が使えなくなる可能性もあります。
インスタグラムやティックトックなどCBDに関心を持つユーザーが多いプラットフォームでは、製品が産業用ヘンプからつくられていることを前提に、広告キャプションや製品ラベルなどに「CBD」というフレーズを記載しないことを条件に広告コンテンツを出すことができます。
しかしまたSNSユーザーは、広告を避けたいという気持ちが強く、ストレートな広告にはあまり反応しない傾向があります。特に若い世代が利用するティックトックは「リアルさ」が重要視されます。インフルエンサーの個性を活かして製品を紹介する方法が、ユーザーに支持を得やすいのです。つまりギラギラとした広告を出すより、インフルエンサーによって自分が製品を楽しんでいるところを見せたり、ファンとコミュニケーションしているというさりげないスタイルの方が、ユーザーはより親近感と信頼感を抱き、CBD製品に限らずインフルエンサーの愛用するものなら自分も使ってみたいと思う可能性が高まります。
まとめ
本稿ではGoogleのCBD広告ポリシーの変更やSNS広告にまつわるトピックご紹介しました。CBDは不眠やストレス、痛み緩和など心身の悩み解決に役立つ健康サプリメントの側面と、まだ多くの人が抱いている大麻への恐れのイメージがせめぎ合っているのが現状です。
しかしCBD市場は順調に成長しており、ユーザーが興味を持ちストレスを感じずに閲覧できるよう提供された広告によって、製品やサービスに関心を持つユーザーは着実に増加していくことでしょう。
※日本国内で販売されているCBD製品は、成分分析表や製造工程表などの提出が必要とされており、原料として成熟した茎や種子が使用されていることが証明された製品に限って合法となっています。一方、大麻草の花穂や葉などから抽出されたCBD製品は規制対象となります。そのため、成分分析表を確認したり、信頼できるブランドの製品を選ぶことが重要です。
また、CBD製品を使用する際には、自分の悩みに合わせた製品を選び治療中の場合は医師と相談することが大切です。これにより効果を最大限に発揮させ、安全性を確保することができます。