18歳以上の成人による大麻の所持・使用が合法化されているカナダで、大学キャンパス内に大麻医療の診療所と大販売店を導入され、賛否両論が上がっています。
大学キャンパスで大麻を売買?
2018年10月から大麻が合法化されているカナダ。娯楽目的の大麻使用を合法にした世界で2番目の国になります。成人は政府から認可された生産者からの大麻の購入と使用が可能になっていますが、所持できる量の上限や未成年の使用、国外への持ち出しは厳しく規制されており、安全のための対策が講じられています。
そんな中、カナダ西部の名門ブリティッシュコロンビア大学のキャンパス内に大麻販売店ができることが報じられ、話題になっています。
これはディスペンサリー(Dispensary)と呼ばれる医療用・嗜好用大麻を合法的に販売する大麻薬局のことです。扱う大麻の種類は様々で、乾燥大麻の花(バッズ)、ベイプ、オイル、大麻を配合した食品やドリンクなど多岐に渡ります。(※販売可能な製品は地域によって異なります。)
ディスペンサリーの設置は学生56,000人以上を代表する組織Alma Mater Society(AMS=母校協会)によってサポートされ、ディスペンサリー設置嘆願書では2000を超える署名を集めたと報じられています。このディスペンサリーは入学シーズンの2022秋にオープンする予定で、世界初の学内ディスペンサリーとなります。
目的は学生を守るため?
キャンパス内で大麻を販売する理由は「安全のため」。AMSの代表は「現在、大学の最寄りのディスペンサリーは2.5 km以上離れており学生は歩くかバスに乗らなければならず、それ以外の選択肢は街角の違法ディーラーしかない。このため学生が法を侵してしまうケースが多い」と主張しています。つまり学内に合法的なディスペンサリーを設置することは学生の安全とブラックマーケットでの取引を減らすために必須であるというのです。
小売業者はカリフォルニアやフロリダ州など米国にも進出している人気ブランドの「バーブ(Burb)」。 大麻使用が許可されているカナダやアメリカの一部の州であっても大学建物内での大麻の栽培、調理、喫煙は禁止されていることも多い中での、非常に大胆な試みです。
隣人の反対運動も大きい
学生の安全のためという理由でも、居住エリアにディスペンサリーができることを快く思わない人たちも存在します。とくに未成年へのリスクを懸念する層は、新しいディスペンサリーが近隣の高校と小学校に近すぎることを理由に反対キャンペーンを展開し、1,900の署名を集めたたと報じられています。
その理由は年齢別の大麻使用率は16歳から24歳までが最も多く、アルコールやタバコ、そのらのドラッグと同じく未成年へのリスクが懸念されているためです。また最終学歴が高卒の若者と大学卒業者の大麻使用率を比べると、高校卒業者が32%、大学卒業者が19%と使用率に大きな差が出たことも理由の一つで、大麻利用は25歳以上にすべきという根強い意見もあります。
さらに大麻目的で大学を訪れる人が増えるのではないかという心配の声も上がっています。
政府の報告書によると、パンデミックによって起こったロックダウン中に大麻使用が増えており、その目的はリラックス(73%)や退屈しのぎ(65%)、そしてストレス解消(53%)と不安解消(53%)が続きます。大麻の使用を始める平均年齢は20歳でした。
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合法とはいえ大学生が皆が大麻を使用しているわけではなく、大麻使用の経験があるのは全体の3分の1程度と言われます。そのほとんどは過去に試したことがあるか、もしくは月に一度や週に1日から数回使う程度の学生がほとんどで、日常的に使用するユーザーはごくわずか(2%)とされています。
学生の大麻使用率が最も高い大学はケベック州にあるビショップス大学 で、ブリティッシュコロンビア大学は全国24位。また大麻使用率の高い学科は哲学、ジャーナリズム、環境科学、経済学科などで、言語学や教育学、数学、畜産学科の学生は使用率が低いというデータが出ています。学部専攻によって大麻への関心に差が出るというのも興味深い現象です。
大麻教育の徹底が安全のカギ
合法化の動きに加えて、大麻使用が及ぼす影響に関する教育もさらに大切になっています。 メリットとデメリットについて知り責任を持って楽しむことで、大麻の二次的なデメリットを大きく減らすことができるからです。
またアルコールと大麻を併用することの危険性や、「飲んだら乗るな」のスローガンと同じく「大麻を服用したら車の運転をしない」という、常識的すぎる注意事項も大麻が非合法であった時代はオープンに行うことができなかったことであり、これから広めていくべき重要事項です。
アルコールやタバコと同じように、健康被害を減らす知識を広めたり、より安全に消費することができる環境を提供する方が、やみくもに禁じるよりも現実的で効果的というのが大麻合法化の進むエリアでは常識的な考えになりつつあります。ブリティッシュコロンビア州では嗜好用大麻のデリバリーサービスも承認されました。今回の学内ディスペンサリーが問題なく運営されることになれば、世界中に同じ動きが広がっていく可能性も大いにあるのではないでしょうか。
<参考資料>