規制の厳しい大麻草から抽出される成分のため、合法なのにどこかアンダーグラウンドなイメージがつきまとってきたCBD。しかし大麻草がよりオープンに受け入れられている海外では、品質の高さはもちろん、高級感やラグジュアリーなサービスを売りにしたCBDブランドが登場しています。
ウェルネス界のトレンド「カンナビジオール(CBD)」
10年前ごろから注目されはじめ、健康ブームやパンデミックで飛躍的に急成長しているウェルネス産業。ウェルネス(wellness)とは心身ともによりよく生きようとするライフスタイル全般のことを指します。これまでの健康産業と異なり、ビューティーやアンチエイジング、フィットネスなどのほかに、メンタル面の健康についてもフォーカスされているのが特徴です。このため健康食品や飲食スタイル、心身のバランスを整えるエクササイズやヨガ、サプリメント、心身のリラックスにフォーカスした旅行など、扱われるジャンルは広範囲にわたります。
そんな中でこの数年スポットが当たっているウェルネス成分がCBDです。CBDというのは生理活性物質カンナビジオール(Cannabidiol)の略。産業用の大麻草に含まれる100種類以上ある生理活性物質カンナビノイドの1つです。 近年の研究によって健康・美容・医療効果が注目されて北米を中心に合法化が進み、CBDを使った製品は世界の一大ビジネスになっています。
どんな効果があるの
CBDは主に大麻草から抽出されますが、化学合成されたものや、最新の精密発酵技術により酵母菌から生合成されたタイプなどがあります。
カンナビノイドは人体に備わったバランス調整機能エンド・カンナビノイド・システム (ECS) に働きかけることで様々な作用をもたらします。
私たちの体の中では、内因性カンナビノイドと呼ばれる体内で生成された物質が全身
に分布するカンナビノイド受容体に結合することで機能しています。麻由来のカンナビノイドは外からこのカンナビノイドを補填することで心身バランスの崩れを整えてくれるのです。
CBDのおもな働きは、精神のリラックス作用、炎症緩和、免疫系・循環器系・神経系の調節などです。特に炎症緩和によって痛みを鎮める効果や、神経系の調節で不安や不眠を改善させるといったメリットがよく知られています。また医療レベルまで濃度を上げることで、重度のてんかん患者の発作を抑えたり、がんの化学治療によって起こる副作用を鎮める効果も認められています。英GW ファーマシューティカルズ社が開発した、てんかん重症患者向けの大麻製剤「エピディオレックス」、多発性硬化症(MS)の症状を緩和する製剤「サティベックス」などは、すでに処方が認可されている国もあります。日本でも2022年に入りCBD製剤「エピディオレックス」の臨床試験が始まりました。
アンダーグラウンドからラグジュアリー路線へ
CBDのもつ炎症緩和効果はスポーツ等による筋肉疲労や怪我のアフターケアにも有効なことが知られ、アクティブ派の使用も増えています。特に2018年に入り世界アンチ・ドーピング機構(※)が使用禁止リストからCBDを除外したことでプロからアマチュア・アスリートまで一気にファンが増え、フィットネス専門誌でもアスリート向けCBD製品が特集されるようになりました。
また気になる炎症を抑えて健康な肌をサポートするCBDコスメも登場し、美容トレンドに敏感な女性の心を掴み一気に認知度が高まっています。現在では美肌コスメのほかにもシャンプーなどのヘアケア製品やバス用品、歯磨き粉といった商品にも配合されるようになっています。
※世界アンチ・ドーピング機構(WADA)=公正でクリーンなスポーツを守り、アスリートの権利を守るため、国際大会などでアスリートの使用禁止薬物を規定する団体。1999年11月に設立。
世界最高のデパートにもデビュー
米国に比べると、まだ大麻に保守的なヨーロッパにおいてすらCBD人気は止まるところを知りません。中でも英国のCBDプレミアムブランドとして知られる「ブリティッシュ・カナビス(BRITISH CANNABIS)」は、ロンドンの高感度なデパート「セルフリッジズ」にできた高感度「ウェルネス・バー」にデビュー。ここでは腸内健康からホルモンバランス調整、二日酔いの治療や睡眠のハッキングに至るまで、ウェルネスに役立つ250以上の製品を見つけることができます。ブリティッシュ・カナビス社では、これまでなかったラグジュアリー感を打ち出し「CBD界のシャンパン」という触れ込みで美容に関心の高い層にアピールしています。
このセルフリッジズは、2010年と2012年に世界最高の百貨店に選ばれたことでも有名です。
オンラインショッピングに慣れた若い世代でもつい足を運びたくなる「体験スペース」作りを意識した店舗をモットーに、常にユニークなエクスペリエンスで流行に敏感な若い世代や世界中の観光客のハートを掴んでいる高感度デパートです。
テレビCMもオンエアに
ブリティッシュ・カナビス社は2022年3月にスカイ局ほか様々なテレビ局でCMキャンペーンを行ったことでも話題になりました。数多い企業のなかから際立ち、信頼のおけるブランドイメージを獲得するためにマスメディアへの露出はとても有効です。
またNECバーミンガムで行われた大規模なメディカル関連企業のの展示会「ファーマシーショー」にも出展し多くのの関心を集めました。舌下にたらして摂取するオイル型のほかにも、レスキュークリームやカプセル、経皮パッチ、コスメ用クリームなどがあり、同社の高品質CBDを使ったオリジナルブランドを作りたい企業向け「ホワイトレーベル」ラインのフル・サービスも用意されています。同じプレミアム路線でもクリエイティブ・ピープル受けのするドリンクに特化したTRIP(トリップ)とはまた違う、独自の戦略といえるでしょう。
レッドオーシャンで差別化を図るには
金脈を発掘し一攫千金を求めて人々が採掘に殺到した「ゴールドラッシュ」にちなんで「グリーンラッシュ(大麻特需)」と呼ばれることも多い現在の大麻ブーム。
競争が激しいレッドオーシャンで成功するには、顧客に自社商品を選んでもらわなければなりません。ターゲット層は男性・ミレニアム・女性・シニア層へとどんどん広っていますが、どの層にターゲットを絞りユーザーを開拓するか、そして信頼あるブランドとして認知されるかが生き残りのカギとなりそうです。
CBD配合のスキンケア用品は業界の大きなトレンドです。欧米ブランドだけでなく、医療大麻合法化が始まったアジアも含めこれから新しいゴールドラッシュが始まるのかもしれません。
<参考資料>