ヘンプから抽出される薬理成分として、CBD(カンナビジオール)に次いでCBG(カンナビゲロール)と呼ばれる成分が注目されています。どのような性質や効能を持っているのでしょうか。
100種類以上ある大麻のカンナビノイド
世界的なウェルネストレンドの中で、大麻から抽出される生理活性物質カンナビノイドに注目が集まっています。中でも健康維持やリラックス効果が期待できるカンナビノイドの一種CBD(カンナビジオール)は現在最も注目されている成分です。
アサ科1年草である大麻草(学名はカンナビス・サティバ・エル)には、カンナビノイド、テルペン、フラボノイドなどを数百種類もの化合物が含まれています。中でもカンナビノイドは104種類が見つかっており、最も知られているのはマリファナの主成分として有名なTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)と精神作用を引き起こさないCBD(カンナビジオール)の2つです。
CBDは日本でも合法となっており、向精神作用をもたらすTHCは海外で嗜好品として使用されるだけでなく、重度のてんかんやがんの治療に用いられるなど医薬品としての効果も期待されています。
これらのカンナビノイドは人間の身体調節機能であるエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけ身体機能のバランスを整えます。現在話題となっているカンナビノイドCBDは、痛みや炎症緩和、リラックス効果が広く知られ様々な商品が生まれています。
そして研究が進むにつれ、次の注目成分としてCBG(カンナビゲロール)と呼ばれる成分にスポットが当てられています。
CBGのメリット・デメリット
大麻草に含まれるCBG(カンナビゲロール=Cannabigerol)は、THC、CBD、CBCの他のカンナビノイドの母体となる物質のことです。まず大麻草の中で「カンナビゲロール酸=CBGA」という物質が生成され、植物が成長するにつれ光、紫外線、酸素の影響を受けCBGに変化します。
研究によると、CBGには抗菌作用や炎症を抑制する機能があり、骨の成長促進をすることもわかっています。また眼内圧を低下させ緑内障を抑え、神経障害(ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症など)や炎症性腸疾患の治療に治療の可能性があるとされています。CBDと同様に精神活性作用がないため利用しやすく、他の成分と一緒に摂取することで相乗作用が生まれるアントラージュ効果も期待できるといいます。
非常に多様な治療効果を持つ物質ですが、デメリットは希少性が高いため高価になってしまうという点です。
有機化学合成で低コスト化も可能になる
2021年2月に国際バイオ医薬品企業ジャズ・ファーマシューティカル社が、大麻由来の発性硬化症の治療薬ナビキシモルス、重度てんかん治療薬エピディオレックスで知られるイギリスの製薬会社GWファーマシューティカルを買収し、グローバルバイオ医薬品リーダーの育成を発表したニュースによって大麻医薬品分野に投資家の関心が集まりました。
同じくカナダのバイオテック企業ウィロー・バイオサイエンス社の株価も43%以上上昇したと報じられました。ウィロー・バイオサイエンスは、大麻化合物を商業生産するための独自の生合成プロセスを開発した企業の一つ。大麻の遺伝情報を酵母に転送してカンナビノイドの生産を増やし、効率的なカンナビノイド製造を可能にしました。ビール作りの過程によく似ていますが、アルコールの代わりにカンナビノイドを作り出すことができるまだ新しい技術です。この独自のプロセスにより、CBGのように希少なカンナビノイド化合物も高純度で、量産生成することができるようになると期待されています。また同社では米コロラドを拠点とするバイオ医薬品企業シグナム・バイオサイエンス社と協力し、CBGのスキンケア分野における有用性研究を完了し、英国のCellular Goods社よりCBGスキンケア用品をリリース予定です。
また医療用大麻草の屋内栽培では、照明や換気扇などのエネルギーを消費しますが、有機化学合成によって環境への影響を軽減できるといいます。
カンナビノイドには他にどんな種類がある?
CBD、THC、CBGと3つのカンナビノイドの違いについて説明しましたが、大麻草由来のカンナビノイドは100種類以上があり、未知の可能性を秘めた成分もあります。一例をあげてみましょう。
CBN:カンナビノール
THCが分解して生成されるカンナビノイドです。精神活性作用は弱く、痛みの緩和・炎症緩和・睡眠補助の作用が発見されています。
THCV:テトラヒドロカンナビバリン
CBGではなくCBGVを前駆物質とした成分。食欲を抑制し、発作とけいれんを減らし、骨の成長促進を刺激する作用があります。
CBDV:カンナビジバリン
CBGVを前駆物質とした成分。精神作用がなく、大麻由来製剤のGW製薬の研究ではてんかんの治療に有用であることが発表されています。
まとめ
大麻成分の研究はまだ日が浅く、その宝物の全てをまだ発見しきれていません。多様なカンナビノイドの中から、今後人類に大きく貢献してくれるさらなる成分が見つかるのかもしれません。
<参考資料>
カンナビゲロールの薬理学的症例
https://jpet.aspetjournals.org/content/376/2/204
ジャズ・ファーマシューティカル社
https://www.jazzpharma.com/
ウィロー・バイオサイエンス社
https://www.willowbio.com/
GW製薬の研究によるとてんかんの治療
https://ir.gwpharm.com/news-releases/news-release-details/gw-pharmaceuticals-announces-preliminary-results-phase-2a-study
Cellular Goods
https://www.cellulargoods.co/